イセヒカリ誕生秘話
1989年(昭和64年)、神田(伊勢神宮のそばには神様に奉納するためのお米を作る御神田があります。「神宮神田」と呼ばれる田んぼ)
ではコシヒカリを栽培していましたが、その年に2度台風に見舞われ稲のほとんどが倒伏してしまいました。
そのような中、奇跡的に倒れず2株の稲が並んで生き残っていました。
これが後に「イセヒカリ」となる稲です。
生き残った2株を種取りして栽培したところコシヒカリとは全く違う特性を持った稲に成長したのです。
この点に注目した農家により翌年からは試験栽培が始まりました。
そして1996年(平成8年)に、「イセヒカリ」と名付けられたのです。
イセヒカリのイセは「伊勢」ヒカリはコシヒカリの「ヒカリ」にちなんでいます。
現在もなお伊勢神宮ではイセヒカリを御神饌(ごしんせん:神様に献上する供物)として奉納しています。
山本農園でも2023年(令和5年)に奉納させて頂きました。
イセヒカリの特徴とは!?
イセヒカリは、1989年(昭和64年)の台風の時に現れたコシヒカリの突然変異種です。
そして面白いのが、コシヒカリとは異なる特性を持っています。
* 多収で病気に強い
* 稈(かん:の茎)が太く短いので倒れにくい
* 硬質であっさりした食味
コシヒカリの突然変異で生まれたイセヒカリですがコシヒカリとは対照的な特徴を持っているんですね。
特に食味に関しては、アミロース値が高いと言われ、実際に食べてみるとコシヒカリよりも硬質であっさりしています。
イセヒカリのあっさりは体に良い?
お米は主にアミロースとアミロペクチンという成分でできておりそれぞれの含有量でお米の食味は変わります。
アミロースが多い→硬質であっさり
アミロペクチンが多い→粘りが強い
つまり、コシヒカリなどのお米はアミロペクチンが多く、イセヒカリはアミロースが多いお米なんですね。
現代で美味しいとされるお米はアミロペクチンの多いモチモチしたお米ですが、最近では、イセヒカリのようなアミロース値の高いお米が健康に良いともいわれています。
アミロースが多く含まれるお米は構造上ブドウ糖の分解に時間がかかります。
したがって、コシヒカリなどに比べ糖の吸収がゆるやかなのです。
つまり、アミロースを多く含んだお米は、血糖値の上昇を緩やかにでき、体に負担を与えないので、糖尿病の食事療法にも提供できるとして期待が高まっているのです。
味・食感はどうなの?
1997年(平成9年)、アンケート調査とともに行った食味計による食味値分析結果も、イセヒカリがその人の作るその県の奨励品種を超えていました。
炊飯しての食味は、異口同音に「寿司米に向く」といわれ、典型的なかつての瀬戸内低温登熱の硬質米の食味となっています。
よく作られたイセヒカリを正しく炊いた御飯を常食すると、外食は出来なくなること請け合いで、コメを洗わないで使う本格的な欧風調理でのパエリヤ、リゾットなどにイセヒカリはまた適合します。
コシヒカリ並みの少肥栽培をすると収量は平均反収ながら食味値は抜群となり、コシヒカリを凌ぐものとなり、文句なく美味しいお米となっております。
イセヒカリの炊き方
イセヒカリは典型的な硬質米で、専門家によると「低アミロース米ではないため、吸水に時間がかかる」という性質を持っているのだそうです。
そのため時間をかけて、十分に水を浸透させてあげないと本来の味を発揮してくれないのです。
コシヒカリのような軟質米用に設計されている炊飯器を使い、さっとといで、すぐにスイッチを入れて炊く、というやり方では「堅くて食べられない」という結果になります。
さて実際の炊き方ですが、何も難しいことはありません。
ポイントは準備の時間と水加減です。
もっとも美味しく炊く方法は、まず、できれば一晩水につけていただくことです。
スイッチを入れる前の最後の水加減では、硬め好きか、柔らかめが好きかという好みにもよりますし、収穫後の乾燥程度によっても変わってきますので、何度か水加減を試してお好みに合うようにされると良いと思います。
一晩水につけるなんて面倒だ、という方は、水加減を多めして炊くことで、おいしく炊けると思います。
コシヒカリとは全く違う食感・風味となっておりますので、是非ご賞味くださいませ!